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    誓いの聖地。 

    のち 寒かった。


     関東では珍しいくらい降りしきる雪の中、車を走らせた。もうすぐ、目的地の光が見えるはずだ。確か、この方角…と思い、その方向に目を走らせる。が、そこにはいつもの風景はなかった。そこにあったのは…。キラキラと光る白いビルのような立方体。キレイだ。あぁ、いつものスポットライトに照らされた風景が、ビルに見えるほど雪は激しく降っているんだ…。

     Kグラウンド。我が県北部の少年サッカーの聖地。

     駐車場に車を止め、グラウンドを見る。葉を落とした背の高い銀杏、ケヤキを黒い模様としてビルのような空間は広がる。それが照明による幻影だと分かっていても、その美しさに暫し見とれた。

     グラウンドは当然、ぬかるんでいる。水も所々に浮いている。ボールも水を吸って重いに違いない。けれど。ここに集うサッカー少年達に、それはあまり関係ない。「雨の中のサッカー」「雪の中のサッカー」という負荷を楽しむ姿はいつも以上に生き生きとしている。丁度、ゲームが始まったところだ。コーチから厳しい声が飛ぶ。その声でプレーを止めることはないが、プレーの質は修正される。「いつもより、激しいかな?」と思ったが、その疑問はすぐに納得できた。

     そうか。新人戦、鬼平チームに負けて最初の練習なんだ、今日は。

     一番背の高い影に声を掛けずに車に戻った。掛ければ、練習を抜けて僕と話をしてくれることは分かっている。でも。今日は邪魔をしたくない。今日の練習の熱さに水を挟むのは〝空〟だけでいい。僕は、息子の件の御礼を述べることだけが目的だ。ゆっくり待とう。

     雪はさらに降りしきる。

     試合は終わった。が、すぐには車を出なかった。大きな影、自らがトンボを持ち、グラウンド整備を始めたからだ。この方は、決して驕らない。グラウンドを馴らすことは日常だ。ボール拾いもすれば、水まきだってする。サッカーに関わることならば、面倒と思うことは1つもないのだろう。

     だから。このチームは強いのだ。改めて感じた。

     行って手伝おうか? と思ったが止めた。これから子どもたちに話をするはずだ。そこまでが今日の練習。僕は今日だけは邪魔をしてはならない。そう思って、グラウンドを眺め続ける。20人ほどの人影が、走り抜けていく。KSC・U15。中には、今日、公立高の受験を終えた子もいた。久しぶりに見る、走る姿が逞しくなっていた。

     もう一度だけ。卒団までに、KSC・U15の試合を見てみたい。
     叶うならば。

     愚息の影をその軍団の中に求めたが、いなかった。きっと、弱い自分に負けて見学を決め込んでいるのだろう。「締めだな」と呟いて、すぐに自分に笑った。もう、そういう時期は過ぎている。自分で自分の甘さに気づけなければ、それまでだ。自分の行動に責任を持つ。自分の所為は自分に返ってくる。それを自分で感じることが〝大人〟になるということだ。もう言うまい。

     雪の勢いは増す。

     子ども達も解散したようだ。車を出て、挨拶に向かう。僕を認めて「おおっ!」と声を掛けてくださる。「鬼平チームに、あっさり負けたよ」。僕は試合を見ていない。でも、絶対に〝あっさり〟負けたのではないことを知っている。このチームは、そういうチームだ。「まだまだ、だ。ウチは」。同じことを鬼平先生がブログで書いていましたと僕は苦笑しながら応えた。「でも、負けたのはウチだ。チャンスはあったけどな。シュートを打ち切れないウチと打ち切った鬼平チームの差は確実にあったよ」。「普段の力がまだまだ出せない。いつものサッカーがなかなかできない。でも、それが県大会だ。それを今年も鬼平チーム相手に経験できた。そのことが春に繋がる。だから県大会は良い場所だ」。

     〝だから、オマエも県大会に来い〟。
     勝手だが。僕にはそう聞こえた。

     3年後。必ず県大会に行こう。
     雪の聖地で心に誓った。


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