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    息子、交通事故に遭う。欲張らない。18日目。 

     僕も歯が痛い。


     人間というのは、欲深いイキモノだなぁ…とつくづく思う。
     自分の欲深さに昨日からイヤ気が差している。
     
     実は、昨日のカンファレンス、書いていないことがある。
     「歯」の話だ。

     「先生。顎が治ってからの歯の話を聞かせてください。インプラントですよね?」。

     「……。インプラントには、ネジを埋めるための土台となる歯を前後から支えている歯槽骨が必要です。が、息子君の場合、この前の分が上下とも失くなってしまいました。歯槽骨は再生しないのです…。なので、インプラントをしようとするならば、骨を移植する必要があります。普通は親知らずの部分を取って、移植しますが…。上下とも4本の長さはキツい…。腰の骨を取っての移植となるでしょう。期間は定着するのに3カ月、そこからインプラントに3カ月…」。

     「えっ? えっ? 新学期に間に合わないってことですか?」。

     「インプラントまで一気に進めれば…の話です。極端な話、1年後でも3年後でもインプラントのための手術はできます。慌てる必要はないです。インプラントに移行するまで、入れ歯で対応すればフツーに生活できます。ただし、移植の歯槽骨は厚さが足りません。見た目、歯茎が凹んで見えます。なので、インプラントも人工歯茎付きのインプラントにすることになります」。

     はい…。夫婦で落ち込んだ(苦笑)。

     家に帰って嫁と話した。俺達、なんて欲深いのだろう。事故直後、生きていてくれればいいと思った。命の無事が分かると、手足の無事を確認した。その後、後遺障害を心配した。それがないと分かると、受験のことが気になった。それがクリアされると、今度は「歯」だ。一瞬でも「入れ歯じゃカワイソウだ…」と思った。

     歯がないことを恥ずかしいことと思った自分達が情けない。

     15歳の少年が、前歯の上下8本、カパッと外れる入れ歯で対応している姿はどうなのか? と考えること自体が間違いなのだ。生きているのだから。歯ぐらい、どうってことない。70歳を超えれば、ほとんどの人が総入れ歯だ。たかだか55年、それが早くやってきただけ。入れ歯でサッカーができなくなるわけではない。もっと激しいスポーツのラグビー、アイスホッケー選手で入れ歯の選手なんてザラだ。

     笑いたいヤツには笑わせておけばいい。
     入れ歯で壊れる恋ならば、ロクな女じゃない証拠だ。
     「アナタのポリデント使っている姿が好きっ!」という子を息子が選べば済むことだ。

     生きているのだから。治ればサッカーもできるのだから。これ以上、欲張りになるのはやめよう。心の中にしまっておけばいい、このブログに書くことではないと思った自分を恥じよう。起きたことは起きたこと。大事なことは、キチンと自分を持って生きていくことだ。欲をかかないで。人に左右されずにウチの家族は生きていきたい。

     とはいえ。息子に話すタイミングは考えたい。事故後3日目に初めて自分の顔を鏡で見て、相当、ショックを受けていたこともある。まだ、15歳の少年なのだから。それも自然のこと。長い入院生活だ。退院までにシッカリ伝えれば済むことだ。とにかく。欲張りにならずに、進んでいこう。

     なので。これを読んだ方が見舞いに来ても「入れ歯」の話は、まだナシです(笑)。

     「3歩進んで2歩下がる。でも1歩進んでる。それでいいじゃない?」。
     そう笑う嫁の顔に、いい女だなぁと不覚にも思ってしまった18日目だった。



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