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    鍛造。 

     いいお天気。気温も高い。春だ。


     「技術家庭科のテストにはヒゴノカミと削っていない鉛筆1本を買って持ってくること」。中1の中間テストだったと思う。Sという名の先生に言われた。「ヒゴノカミですか? 何ですかそれ?」と聞き返す。先生は「金物屋に行けば売っている!」と答えるのみ。まっ、行けばわかるだろうと街の金物屋を訪れ、「ヒゴノカミくださ~い」。出てきたものは…。

     小型ナイフだった。

     ヒゴノカミ=肥後守。以下、ウィキペディアより。「肥後守(ひごのかみ)とは、日本で戦前から使われていた簡易折りたたみ式刃物(ナイフ)のこと。肥後守は登録商標であり特定の製品の名称であるが、同形状のナイフの総称として使われることが多い。~中略~この上なく単純な構造のため極めて安価に製造出来、また殆ど壊れる所が無いため長く使用出来ることから、近代の日本を代表するフォールディング・ナイフとして広く愛用された。1950年代後半頃からは文房具の一つとして子供たちにも行き渡ったが、やがて鉛筆削り器やカッターナイフの普及、刃物を子供の周囲から排除したがる風潮などに押されて徐々に姿を消した」。

     テスト用紙が配られた。問題を見る。3問しかない。「問1.持ってきた鉛筆を肥後守で削りなさい。また、問2・問3の答案は、その鉛筆を使って書き込むこと」。マジかよ…。 目が点になった。毎年のことなのだろう、テストに立ち会っている担任の声が飛ぶ。「肥後守を動かすのではなく、鉛筆を動かす要領で!」。なかなかウマくいかない。当然、滑らせて手を切るヤツも出てくる。「手を切った? 当たり前だろ、刃物なんだから。危ないものを危なくないように〝便利なもの〟として扱えなくてどうするんだ? 問3までしかないんだから。まずは、丁寧に鉛筆を削れっ!」。

     おかげで。多分、今でも肥後守で鉛筆を削れる。

     今日、我がチーム3年生を連れて県NO1チームの元に遠征に出掛けた。Mコーチと相談して、引率は父とコーチのみとした。厳しい結果が予想される、この遠征に敢えての実施だ。自分達でシートを敷き、自分達でテーブルを組み立て、自分達で水を汲み、自分達でポカリを作る。自分達でコーンを並べ、自分達でアップを始め、自分達で試合に臨む準備をする。

     そして、もちろん自分達が全国レベルと試合をする。

     ボロボロに負けても、自分達で椅子を引き上げ、自分達で集まり、自分達で反省をする。自分達で休み、自分達で水筒に補給をし、自分達でジャグに新たなポカリを作る。お昼になれば、自分達でミニカップ麺に熱湯を注ぎ、自分達で食事の準備・片付けをする。自分達で次の試合に闘志を燃やし、自分達でキーパーを決め、自分達でまたボロボロにされる。

     県NO1チームとの試合という〝中間テスト〟にボロボロにされることも含めて。
     全てのことが自分達の責任だ。
     我がチーム3年生にとって、今日の行動すべてが〝肥後守での鉛筆削り〟たっだ。

     正直言えば、まだまだ物足りない意識の低さではあった。途中、手を貸そうとする父達の甘さも覗えた(当然、僕はそれを制したが)。それでも、大人がガマンをして続けていくことさえできるとするならば。いつかは、全てのことが自分達だけでキッチリ行えるようになる。僕が我がチームからいなくなっても。この3年生だけは、

     涙という〝血〟を流しながらも〝肥後守〟を使っていってほしい。
     自分達を自身の手で鍛えていってほしい。

     そうなれば、県NO1チームとの試合も「ボロボロ」が6年生の頃には「ボロ」ぐらいで済むようになるかもしれない。サッカーを通じて自分達で学んだことは、必ずサッカーの自分達の結果にも返って来る。「そうじゃない!」という人もいるかもしれないが、僕は返って来ると信じたい。否、「信じている」。

     久々に。鉛筆でも削ってみるか。
     僕も自身の鍛え方が、まだまだ甘いようだから。


     ※決して小型ナイフを肯定する気持ちで書いたモノではありません。せめて「厳しいチームだ」と言ってください。その言葉ならば賞賛として受け止めます。



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