2009.02.14 Sat
41/41。

開始52秒。相手SBから縦に真ん中を目掛けてロングボールが蹴り込まれた。背走。KSC・CB25番・息子が走る。間に合う。しかも得意のヘディングだ。ジャンプっ!。「ヘディングが強そう…と相手をビビらせるため」に、前日、再度1厘に刈り上げたスキンヘッドがボールを弾く……。はずだったのだが…。
空を切った。あまりに見事なヘディング空振り。
オレンジJクラブの〝10番〟が、その千載一遇のチャンスを見逃すはずがない。もう1人のKSC・CBBが競りに行くも、時、既に遅し。冷静にキーパーを外し、ゴール。58秒のオレンジJクラブ先制劇となった。
その間、6秒。たったの6秒。
「結果として、タイミングを誤った。飛んだ時は『大丈夫っ!』と思ったけど。落ちて来なかったんだよなぁ、ボールが。相手がボールに回転を掛けた? いや、単純に風だけだよ。逆風の分、舞い上がった感じ。当たらなかった瞬間、『ヤバイっ! やっちゃった…』と思った。ゴールされた瞬間、頭が真っ白になった…」(「言い訳してみろよ」と僕に言われ、シブシブ語った息子)。
「ワリィ…」。両手を合わせ、頭を下げる息子。センターサークルにボールを戻すために駆け寄るチームメイトに平謝り。大きなカラダを申し訳なさそうに縮めている。そりゃそうだ、舞台は県クラブユースU14選手権・決勝戦、対オレンジJJr.ユース戦だ。しかも、「絶対に勝つぞっ!」と選手・スタッフが全員で手を繋いで輪を作って気合を入れてから5分も経っていない時間での痛恨のミスだ。スタンドで観戦していた僕だって〝穴があったら入りたい〟気持ちになった。嫁は嫁で「あ~あぁ…。また、暗い夕食を囲むのね…ウチは…」と思ったらしい(苦笑)。
チームメイトが声を掛ける。「ドンマイっ!」とGK1番・TSクン。「ワリィ、ワリィ。カバー遅れたオレのせいだ。気にすんな。お前が悪いんじゃねぇ」とCB9番・KAクン。「気にすんなっって! 始まったばかりだろっ。事故だ、事故っ! 事故みてぇなもんだ」とボランチ14番・RYクン。「緊張してた~ん? 〝らしく〟ねぇんじゃねん?」と北関東弁はMF30番・KNクンウ。「お前さ、〝敢えて〟ミスしたんだろう?」と笑顔で語りかけるボランチ7番・IZクン。「最初から疲れさせるなよ~。アップは十分だからよ~(笑)」と、SB6番・YNクン。その他、みんなが「気にするなっ!」「ドンマイっ!」と微笑み掛ける。そして、エースFW10番キャプテン・RKクンが「サンキュウなぁ~。オレの見せ場を作ってくれたんだろ?(笑)」。そして続けた。全員を励まし締める。
「1点差だろっ? ひっくり返せるぜっ! オレ達ならっ! 行こうぜっ!」。
「ベンチのみんなも『気にするなっ!』って大声で言ってくれていた。うれしかった。涙、出そうだった。KSCに入ってよかったと思った。RKクンの言う通り、『ひっくり返せるっ!』と信じた。信じたら、開き直れた。『やっちまったことは仕方がない。次、次のプレーっ!』って、その時初めて思えたよ」。
シーンとしていたKSC側スタンドも、すぐに活気を取り戻した。1年生が大きな声で応援を繰り返す。リーダーはクリクリ頭のGK(この子は、小学生の頃から元気のいい子で僕は大好きだった)。「声、チィセーヨ! 大きな声で応援しようぜっ!」。ベンチに入れなかった2年生もスタンドから大応援。「R~Kクンのゴールが見た~いっ!」「見たいっ!」「見た~いっ」の大合唱。
「力になった。応援、聞こえたもん。ピッチに立っているオレ達だけでやっているんじゃないんだっ! ベンチのみんなも、スタンドのメンバーも、1年生も、監督もコーチ陣も一緒にサッカーやっているんだ! みんなで勝とうっ! とマジに思ったもん。今日の試合、多分、みんな、そう思っていたと思うよ」。
思いは叶う。前半、同点。後半、逆転。KSCが県ユースU-14大会優勝だ。
「T監督が、ね。選手全員を集めたところで、みんなに『おめでとう!』って言ってくれた。これから全日本ユースも、高円宮杯もあるわけでしょ? だから、監督は言わないだろうなぁって思っていたから。素直に、ウレシかったよ。だから、『アザ~っす(ありがとうございます)』って言いながら、『ここで終わりじゃないんだ! これからもやってやる!』と逆に思えたよ。あっ! 監督はこうも言ったよっ!」。
「41人で掴んだ優勝だ。それを忘れるなっ!」。
その通り。1人の力は、所詮1/41。でも41人が集まれば、41/41=1の力になる。1人のミスも、みんなで力を合わせれば、取り返すことだってできる。優勝も〝めでたい〟が。それよりも、もしかしたら、もっともっと〝大切なこと〟をオマエ達は学んだのかもしれないぞ、この大会で。
表彰式。県サッカー協会・YK専務理事が、優勝したKSC・U14選手一人一人の首に金メダルを掛けていく。「おめでとうっ!」と声を掛け、握手も繰り返した。でも。息子君だけは、違う言葉を専務理事から賜ったらしい。
「『ちゃんとヘディングしろよっ!』って、言われちゃったよ~~(苦笑)」。
- [2009/02/14 23:46]
- ジュニアユース 中学サッカー |
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