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    本物。 

     多少の風はあった。


     高校選手権が面白い。例年はダイジェスト版で結果を観る程度の興味なのだが、今年は違う。シッカリとビデオ録画して何度も繰り返し見ている。

     本当はスタジアムでナマ観戦したいのだけれども…。

     今日も夜中にビデオを見た。鹿児島城西vs.滝川二高。目玉は何と言っても話題の大迫クンだ。確かにウマイ。いや、ウマイより〝スゴイ〟という言葉の方が正しいなぁ。カラダの大きさ、持っているスピード、シナヤカさとヤワラカさ。そういった常人には想像もつかない身体能力に加えて、鍛えた技術も相当、高い。背負って前を向くスピードの速さ、枠を外すことの少ないシュートのコントロール、そして左右どちらでも打てる強烈な弾丸ミドルシュート。本当にゴールへの意識が高い。

     ナマで観たら、もっと〝スゴい〟のだろうなぁ。

     大迫クンもスゴかったけれども。滝川第二高もよかった。全国常連の〝タキニ〟。サッカー超名門の〝タキニ〟。選手権に入って2試合無失点の〝タキニ〟。その〝タキニ〟が大迫クンに掻き乱され、後半20分過ぎには6失点してしまう。おそらく、ここまでの大差をこの時間でつけられたのは初めてのことだろう。6失点もするとフツーは「闘う気持ち」など持てなくなるのだが…。〝タキニ〟は違った。あきらめずに動く。ガンガン攻め立てる。途中から見た人は「〝タキニ〟が勝っているの?」と勘違いをしたと思う。それほど、〝タキニ〟の「闘う気持ち」は素晴らしかった。

     ナマで観たら、もっと〝素晴らしかった〟のだろうなぁ。

     1点を返し、2点目を返し。が、ここで無情のホイッスルが鳴り響く。試合終了。崩れ落ち、地面に突っ伏すタキニ選手達。心もカラダも限界まで闘った者達だ。その権利はある。だから、負けて泣いたとはいえ、その姿は美しかった。が、テレビはここで終わり。ザ・バーズの例の歌が流れる。♪うつ向くなよ、ふ~り向くなよ~♪ この曲は、それはそれで「青春の一場面を観た」という余韻に浸らせてくれる。

     そう思うと。テレビも悪くはないかぁ…。

     と、思っていたら、ケータイが鳴った。着信名は横浜に住んでいる友人。なんだろう? こんな夜中に。電話に出る。と、かなり興奮している様子だ。泣いている。かなり飲んでいるのだろう。彼は、そのまま、まくしたて始めた。

     「コーチ。オレは…。オレは…。今日ほどサッカーを観て感動をした日はないっ! 聞いてくれ。オマエに話したくて話したくて…電話をしたんだ。今日行ったんだ、三ツ沢。仕事? 休んだ。目の前で選手権やっているのに仕事、行けないよ。大迫はスゴかった。でも、な、コーチ。聞いているか? 聞いているか? オレが感動したのは〝タキニ〟だ。〝タキニ〟なんだよっ! 試合が終わってさ、アイツラさぁ、泣きながら真ん中で礼をしたあと、自分達の応援席じゃなくジョーセーの応援席に先にアイサツに行ったんだよ…。

     (ジュル…鼻を啜る音)。

     それを後押しするようにさぁ、〝タキニ〟の応援席がデッケェ声でエールを送り始めたんだよ。『ジョーセー、ジョーセー、ジョーセー…』って。それに合わせて〝タキニ〟の選手がジーョセーの応援席に礼をしてさぁ…。今度は自分達の応援席に来ようとした時にさぁ、〝タキニ〟応援席から声が飛んだんだよ~。『ありがとうっ! オマエラ、最後までヤレたぞ~っ!』って。〝最後まで…〟。相手応援席にアイサツしなければ〝タキニ〟の試合は終わらないんだよ…。闘っても、相手をリスペクトすることを忘れない…。〝タキニ〟は、ここまでやって初めて試合終了なんだなぁ…。そう思ったら、そこで、ウルッと来た。ちょっとヤバイ…と思った。で、さっきの声の方を見たら〝タキニ〟の応援横断幕が目に飛び込んできて…。そこに書いてあったんだ…。紺地に白抜きの文字で…。

     『怯まず 驕らず 溌剌と』。

     オレ…泣いちゃった…。泣いちゃったよぉ…。
     オレさぁ、三ツ沢で大声出して泣いちゃったよぉ~。
     40過ぎたオヤジがスタジアムで号泣しちゃったよぉ~…」。

     スタジアムには、〝ある〟。必ず〝ある〟。「ドンッ」というインサイドキックの音。「中切ってっ!」という選手同士の声。「ガシッ」というゴツイカラダのきしむ音。そして、風に舞う芝のグリーンダスト。必死に戦う汗。懸命に応援する友の叫び。さらに、歓喜の雄叫びと全力を出し切った者の涙。

     スタジアムならではの。ナマならではの。本物のサッカーがそこに〝ある〟。

     選手権。ナマで観に行きたい。行きたいけど。行けないなぁ…。
     だって。僕も泣いちゃいそうだから…。





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