FC2ブログ

    12文字。 

    のちのち 夕方はキレイな夕焼けに。 
     

    夜の帳が降りようとしている。時計を見ると、まだ18時前。すっかり日が短くなった。もう秋である。

     午後3時過ぎ。我が地区後期大会を終えた我がチーム11期生の30人がホーム小学校グラウンドに全員集合した。アンツ(習熟組)は予選突破。トータス(発展途上組)は第4位で予選突破ならず。結果は違えど、「頑張った」顔・顔・顔。「どうだった?」、「勝ったよ」、「俺らも頑張ったぜ」、各所で色んな会話が聞こえてくる。

     なぜ集合したか?というと。新人戦のプログラム用(新聞掲載用?)の写真を撮るため。30人全員が揃ったのは、ホントに久しぶりである。揃いの「ブラウグラーナ」を27人が、キーパー3人は「黄色adidas」を着て。秋の柔らかい光の中、ゴールを背にして、背の順に3列に並んで、撮影会。

     「イチ タス イチ は?」
     「ニぃ~~~!!」

     元気な元気な声が聞こえてくる。みんな仲間。大事な大事なチームの仲間。全体の終了挨拶をする前に。僕が話を切り出した。

     「今日は皆、頑張った。アンツの諸君、おめでとう。10月22日は優勝目指して頑張って欲しい。トータスの諸君、お疲れ様。決勝Tには行けなかったけど、この大会の君たちの戦いぶりは、コーチの胸に熱く響いた。よく頑張った。胸を張っていい。」

     10秒は黙ったと思う。

     「さっき撮った写真は新人戦のチーム紹介の写真だ。30人全員で撮ったね。でも、コーチはこれから、とってもイヤなことをみんなに言わなくちゃいけない。」

     更に1拍、於いた。

     「新人戦は我がチームから2チームは出せない。県大会に続く大会は、そういうルールになっている。チームの登録は20人。ベンチ入りできるのは20人なんだ。大石は30人いるから、10人の子がベンチに入れない。離れた所から、ユニホームも着れずに応援しなくちゃいけない。悲しいけれど、これがルール。ルールには従わなくちゃいけない」。

     目頭が熱い。

     「予選は11月下旬から。その時までに20人を選ぶ。まだ先のことだけど、それまで一所懸命に練習をして欲しい。勝つためにじゃない。選ばれるために、自分のために練習をして欲しい。これはお願いだ。がんばれ!」

     深呼吸。

     「選ばれた子は『残りの10人の思い』を背負って欲しい。簡単に「選ばれた!」なんて思わないで欲しい。喜んでいいけれど、ウカレないで欲しい。選ばれたことをプレッシャーに感じてくれ。10人の思いを無駄にだけは、するな。してはいけない」。

     更に深呼吸。

     「20人に入れなかったとしたら。入れなかった理由を、コーチはちゃんと話すつもりだ。そして、落ち込め!落ち込んで、落ち込んで、落ち込みまくってくれ。そして。悔しい!と思おう。その悔しさ!を忘れないで欲しい。そして来年の春を目指そう。4月には全国少年サッカー大会の予選がある。その時も20人を選ぶ。その時に20人に入ろう!と努力を続けてください。お願いします」。

     涙が頬を伝うのが自分でわかった。

     「いいかい?これだけは忘れるな。20人が選ばれようと何をされようと、お前達は30人で一つのチームだという事を。20人で一つのチームではない。どんな時も、それを忘れないで」。

     最後に大きな声で。

     「もう一度言う。誓おう。30人で一つのチームだということを忘れない!」。
     

     「はいっ!」。

     大きな大きな声の全員背筋の伸びた、まっすぐに僕を見た「透き通った」返事だった。

     消えていく秋の夕暮れを眺めながら。その「透き通った」返事を思い出しながら。新聞に載る20人の名前を書いた。次に60字のチーム紹介。残りの10人の名前をそこに書いた。升目は12文字分、残った。時計は19時を指している。最期に一言を書き添えた。

     「5年生30人の我がチーム(12文字)」。

    コメント

    コメントの投稿















    管理者にだけ表示を許可する

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    https://halusaka.jp/tb.php/4-6ab73180