2006.10.15 Sun
今夜だけ…。
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「なんでだよ…」。
息子はその場で仰向けになった。カラダを倒す時、そう口が動いたのが見えた。その後は、ひたすら泣いていた。大きい体を大の字にして、審判に促されるまで泣き続けていた。
11期生の秋の県大会への道は本日、幕を閉じた。
代表決定戦はPK戦になった。相手の5人目のキッカー(GK)のPKがゴールに吸い込まれた瞬間、全員が座った姿勢から泣き崩れた。キャプテンはうつ伏せになって、泣き続けた。Aクンはひざを抱えて泣いていた。KクンもSクンも、Tクンもみな泣いていた。
センターラインでの挨拶の時は全員が声にならない挨拶をしていた。それが僕には、ちょっと不満だった。「最後まで!最後まで!」。僕の声が響く。相手ベンチの前には全力で走った。「ありがとうございました!」。そして、エールを贈る。「ファイト!」。
泣き声。でも、大声。かなりの泣き声。でも、かなりの大声。
泣きながら走ってきた子供達が自軍の前で挨拶をしようとすると、Hコーチが人差し指で後ろを指す。「ベンチはいい。応援席に挨拶しよう」。ちょっと鼻声だった。全員が回れ右する。いつものように胸を張った。キャプテンの声が響く。泣き声で。でも大声で。「応援、ありがとうございました」。泣き声の大合唱が後に続く。「ありがとうございましたっ!」。
すごい泣き声。でも、すごい大声。叫ぶような泣き声。でも、叫ぶような大声。
11期生らしい、大きな大きな声だった。いつも通りの胸を張った挨拶だった。ただ一つ違ったのは、言葉にならないほどの泣き声だったこと。さっきの僕の不満は消えた。
陣地に帰ってきて、全員が泣いていた。それぞれのお母さん方が見兼ねて、声を掛け背をさすっていた。でも、泣き声は一向に止まなかった。顔も上げずに泣き続けた。みな、思っていたはずだ。
「なんでだよ…」。
コーチ陣は「泣くな!」と言わなかった。泣く権利はあると思ったから。努力をせずに、やることをやらずに泣いていたのではないことを知っているから。雨が降ろうが、風が吹こうが、県大会に行くんだ!との思いで必死になって練習をしてきたことを知っているから。心の中では、コーチもみな、思っていたはずだ。
「なんでだよ…」。
ベンチに入れず、バルサのユニも着ることが許されず、紺のサードユニを仕方なく着てもらった子供たちも泣いていた。「県大会に行ける!行ってもらって、もう1回選んでもらうチャンスをもらうんだ」と思っていたから。Oクンなんかは、下を向いて泣きっ放しだった。
「なんでだよ…」。
息子は号泣していた。嫁が「あの子があれだけ大声で泣いているのをはじめて見た」というほど号泣していた。確かに聞いたこともない声での号泣だった。何度か、さっきの言葉が、また交じっていた。その声だけはすごく小さかった。
「なんでだよ…」。
僕は知っている。その意味を。「僕はヘタだから。僕はヘタだから。練習する。負けたくないから。負けて泣きたくないから。練習する。絶対に県大会に行きたいから。絶対に行くために。練習する。僕はヘタだから。僕はヘタだから。練習する。なかなか上手くなれないけどね、笑」。そう言って、最近、ボールを1人で蹴っていた。だからこそ、自然に出てきた神への恨み節なんだろう。
「なんでだよ…」。
今は深夜。ここまで、この日記を書いてきて、また思った。僕は、声に出しては、まだ今日は一度も言っていない。言ってみようかな?一度だけ。深夜の独り言だから。誰にも迷惑をかけないはずだ。誰にも怒られない。でも、一度だけにしておこう。どんな結果になるか?は何となく分かるから。
「なんでだよ…」。
声に出した途端、涙があふれ出て来た。みっともないけど。負けたことが現実なんだ、と分かってしまった。
一人で泣いた。
☆お断り 今回の日記は「僕の今の思い」を素直に書いただけです。決して、「他団が我がチームよりも努力をしていない」なんてつもりで書いていません。僕は全国のサッカー少年とそれに関わる全員が努力をしていることを知っています。どうか「そう読めない!」と思わずに、負けたチームの1晩だけの愚痴だと思って、お許しください。すいません。
- [2006/10/15 22:05]
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