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    ひと夏の経験。 

    朝からウダる…。


     今日、以下のような夏休みの宿題作文を息子は書いているはず。彼の話を元にして、僕も彼になり切って作文を書いてみた。どちらが上手いか?は別として(笑)。家に帰って彼の作文を読むのが楽しみだぁ~。


     0、ジ~こ、9、ジ~こ、0、ジ~こ……。ダイヤル式の公衆電話を始めて使った。ピッポッパッと聞こえないけどかかるのだろうか? 母さんが「何かあったらこれで連絡しなさい」とたくさん持たせてくれたテレカは使えない。入れた10円玉は6枚。父さんに用件を伝え終わるかな?6枚分で…。あっ、繋がった!

     「もしもし?父さん?僕。今、戸狩野沢温泉駅。乗り継ぎ電車に乗り遅れた~。次の17時40分に乗る。迎えに来る時間をずらして。うん?乗ってきた電車が6分遅れたから、間に合わなかったんだよ。乗り継ぎに。うん、大丈夫。10円玉6枚しかないから。切れる。うん。よろしく~」。

     あっ、切れた!でもよかった、伝えられたから。これで迎えには来てもらえる~。さて。今は16時20分。次の電車まで1時間20分ある…。この暇をどう過ごそう?

     8月1~4日の3泊4日で、某選抜チームのキャンプにキーパーとして呼ばれた僕は長野県の木島平に出掛けた。行きは皆と一緒にバスで来た。毎日、全国の強豪と試合をやって、夜はバーベーQをして、色んな子とサッカーの話をして。すごく、楽しかった。泊まったペンションの食事もおいしくて。いつもいっぱい食べる僕だけど、さらにたくさんご飯を食べた。

     試合は1回も負けなかった。6試合やって、引き分けが1回あっただけ。4日のリーグ戦最後の茨城のチームとの試合は、勝ったほうが優勝!になるゲームになった。終了間際まで同点。タイムアップ直前に、絶体絶命の1対1のピンチ。相手のすごいシュートを僕が止めて前線にフィード。FWがそのボールを相手ゴールに叩き込んで、鮮やかに勝った。優勝。みんなとコーチが僕とFWを胴上げしてくれた。生まれて初めて胴上げされた。うれしかった~。

     で。その後、皆はバスで帰ったけど。僕は飯山っていう駅から「飯山線」っていう電車に15時55分に一人で乗った。所属少年団が、この日から合宿をしている津南に行くためだ。順調に行けば1時間15分くらいで着くはずだったんだけど、上手くいかなかった。それで、津南にいるお父さんに電話したわけ。

     ホームに1時間以上いるわけにもいかないので。駅の外に出ることにした。駅員さんに事情を話して、「外に出ていいですか?」と聞くと「いいよ~」と言ってくれた。「荷物も置いていっていいよ~。見ていてあげるから」。ありがとうございます!長野の人はみんな親切だ。木島平から飯山駅までも本当はタクシーで行くつもりだったのだけど、宿の人が「お金かけることないよ~」と送ってくれた。ほんと、助かった。さて、腕時計の時間を確認して、と。これ以上、遅れるわけにはいかないから。さあ、知らない町探検に出発!なんか、ドキドキだ。

     駅前は、そんなに寂しいわけじゃない。でも、華やかなわけでもない。店も1、2軒あるだけで道がのんびりと続いている、そんな感じ。キョロキョロと周りを見渡しながら歩くと、すれ違う人が「こんにちは~」と挨拶をしてくる。だから、僕も「こんにちは~」と返す。そのうち、僕のほうから「こんにちは~」と言えるようになってきた。なんだかとっても気持ちがいい。

     しばらく歩く。のどが渇いた。ジュースの自販機の前でお金を探していると、どこかのバアちゃんが話し掛けてきた。「こんにちは~。ぼうず、おめえ、どこから来た?」。関東と答えると、「あれぇ~。また遠いところから来たなあ。どこ泊まるんだ、今日の宿は?」とまた聞く。ここにいる事情を話すと、「それはかわいそうだなあ。ウチ寄れ。ジュースなんか買うことねえ。冷たい麦茶飲め。ウチで。そこだから。ウチ来い」と続ける。すごく笑顔の素敵なバアちゃんなので、知らない人だけど着いていくことにした。

     1分も歩かずにバアちゃんの家に着いた。家にはジイちゃんがいた。バアちゃんが「この子、関東から来たんだと。一人で津南に行くんだと。で、電車に乗遅れたんだと」と説明をする。ジイちゃんは「また、電車、行っちまったのか。先に。仕方ねえなぁ。ゆっくりしてけ。よくあるんだ、飯山線は。ごめんなあ、ぼうず」とJRに代わって謝ってくれた。バアちゃんは冷たい麦茶と水ようかんとお菓子を出してくれた。麦茶は、すごく冷えていて美味しかった。お菓子を食べながら、いろいろと話をした。木島平で胴上げされた話、自分の夢の話、サッカーの友だちの話。県NO1チームに勝ちたい話。ジイちゃんとバアちゃんは笑いながら聞いてくれた。

     あっというまに時間が経った。駅に戻らなくちゃいけない。「ごちそうさま~でした~。もう行きます」と言うと「ぼうず、サッカーがんばれなぁ~」と笑顔を見せた。「はいっ!さよなら」と挨拶をして駅に走った。なんだかとっても気持ちが、またよくなった。

     電車に乗って津南に着いた。Hコーチが迎えに着てくれていた。知っている人の顔を見たら、ちょっと安心した。安心したらお腹空いた~。早く宿に行って、みんなといっしょにご飯を食べたい!と思った。

     小学6年の夏休み。知らない町でのたった一人のちょっとした冒険。電車が遅れてくれて逆に良かったかも~。やさしい人にたくさん逢えたから。僕はこの夏を一生忘れない。

     高校生になったら、また1人でジイちゃんとバアちゃんに会いに行ってみたいと思う。

     その時、覚えていてくれるかな?僕のこと。



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