2006.05.27 Sat
無力。
- 少年サッカー
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雨は降る。
雨の中、練習をした。メニューは違うが、いつも通りの練習だった。何が違うわけじゃない、いつものメンバーといつものコーチでの練習。「タッチを細かく!」、「取られたら取り返せ!」。コーチ陣の声もいつも何も変わらない。誰を特別扱いすることもない普段通りの練習。僕もHコーチも何一つ、いつもと違う態度を取ったつもりはない。降りしきる雨よりも、心の中は土砂降り状態であったとしても。
雨は降る。
今日を最期にSクンが辞めることになっていた。僕らも普段通り。彼も「辞める」なんて全く感じさせない、普段通りのガッツあるプレーを見せ続けてくれた。「サッカーが好き!」。「サッカーが楽しい」。全身でそれを表し、プレーを続けていた。いつも通りのこと。普段と何も違わない彼のプレ―スタイル。変わらないことが悲しかった。でも、彼が変えていないのだから。僕らが変えるわけにはいかない。。。
本当に。練習中は何も変わらなかった。いつも通りの笑顔。いつも通りのプレー。いつも通りの一生懸命さ。車の中でも、いつも通りの「おふざけ」。何もかもが、いつも通り。
雨は降る。
練習終了の挨拶をする前に、HコーチからSクンが呼ばれ、皆の前に立った。その事実をHコーチから発表され、挨拶を始めるSクン。泣いていた。好きなサッカーを辞めたくない! みんなと一緒に続けたい! 言葉とは裏腹にそんな思いが伝わってくる涙声の立派な立派な挨拶だった。
Yくんが泣いた。Kくんも泣いた。Tくんも泣いた。みんなが突然のことに驚き、泣いた。Sくんの心の叫びがわかったから。さっきまでフツーに過ごしていた、過ごそうとしていたSくんの思いやりが皆に伝わったから。だから、みんなが泣いた。
僕は無力だ。サッカーが好き! と思っている子にサッカーを続けさせることができなかった。サッカーをしている時が一番楽しい! と感じている子に続けさせてあげられる環境を用意できなかった。県大会に行けなかったことなんかどうでもいい。こんなに、こんなにも力の無い、無力である自分が恥ずかしい。
ゴメンな、Sくん。
雨は降る。
後ろを向いた。上を向いた。悟られたくなかったから。顔に雨がかかる。僕の顔にだけ、しょっぱい雨が降る。
「Sくんの分まで頑張ろう。好きなサッカーを続けられる幸せを噛み締めろ。手を抜いたり、いい加減にだけはやるな。それではSくんに申し訳が立たないだろ?」。Hコーチの声が響く。次は僕の番だ。でも、雄弁に語れなかった。短く、最低限のことしか言えなかった。涙をこらえきれなくなってしまうから。
Sくん。お前は仲間だ。みんなの仲間だ。卒団式には来い。お前にはその資格がある。
明日からも何が違うわけではない。いつも通り。普段通り。ただ、Sくんは、サッカーにもう来ない。それでも11期生は30人。Sクンを入れて30人。そう思い続けたい。
ごめんな。それが僕にできる最期のこと。
ごめんな。無力で。
- [2006/05/27 20:16]
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