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    所在地:福島県田村郡三春町大字滝字桜久保 

     「優しい悪魔」が好きだった。


     三春の滝桜が満開になった。三春の滝桜とは、福島県田村郡三春町にある、樹齢1000年以上のベニシダレザクラの木だ。毎年4月中旬過ぎに咲く。四方に広げた枝から花が流れ落ちる滝のようなることから、この名で呼ばれる。高さ12m、根回り11m、幹周り9.5m。枝張りは東西に22m、南北18mに及ぶ。

     美しい。
     文句なしに美しい。
     それにしても美しい。
     ここで見てほしい。http://www.takizakura.com/

     僕は。この滝桜を観に行ったことがない。嫁の実家が三春町に近い福島県大玉村にあるというのに、観に行ったことがない。それには理由がある。多分、言い訳にしかならないのだが。この時期、毎年、少年サッカーも〝満開〟だから。6年生は全少予選。5年は我が地区前期大会。4年以下は5月にかけて、A市本部長杯争奪サッカー大会が行なわれる。だから、三春の滝桜を観に行く暇がなかった。

     観たいなぁ、三春の滝桜を。

     明後日は雨の予報だ。おそらく我がチーム4年生の練習も休みにするしかないだろう。そうか。今年は観に行けるかも。嫁と二人で日本三大桜ツアーに出掛ようか。久しぶりのデートとしては最高のシチュエーションなのかもしれないなぁ。なにしろ日本三大桜が満開なのだから。きっと嫁は喜ぶだろう。自分の郷土の桜が久しぶりに観られるだから。「綺麗だね」と2人で語ったら、幸せな気持ちになれるだろうなぁ、きっと。

     滝桜はスゴいなぁと思う。
     どっしりと根を張り、毎年、花を咲かせる。
     どんなときも。4月になれば、花を咲かせる。
     1000年間、それは変わらないことだ。

     いや。滝桜だけではない、か。人も、そうだ。実際、僕だって4月になれば、少年サッカーを子ども達と、毎年満喫してきた。それは1000年ではないけれども。毎年、変わらずに続けてきたことだ。桜咲く、4月。少年サッカー満開の4月。それは、何があっても変わらずに続けていけるものだ。どんなことがあろうとも。そう信じていた。

     でも。でも。とても残念なことなのだけれども。今年の4月は。当たり前のことが当たり前に行なわれない現実がある。サッカー満開を満喫できない子ども達がいる現実がある。滝桜は何事もなかったかのように咲いているのに。本来、当たり前にサッカーができるはずの、子ども達がそれをできない現実がある。きっときっと。ウマイヘタに関わらず。今年の4月に咲く準備を必死に必死に続けてきていたのに。

     咲く前に。咲くこと自体ができなくなってしまった子もいる。
     咲く前に。咲く場所が無くなってしまった子もいる。
     咲く前に。咲く場所はあるのに、咲くことを制限された子もいる。

     頑張って咲いている三春の桜を観に行ってあげるように。僕らが、子ども達にできることは、何だろう。咲く前に咲くこと自体ができなくなってしまった子のためには、生き残った僕らが懸命に生きるしかない。咲く前に咲く場所が無くなってしまった子のためには、必要なものを送り、励まし続けるしかない。咲く前に咲くこと自体が許されない子のためには。咲く場所を提供してあげるしかないはずだ。

     お題目を唱える前に。
     僕は、できることを。しよう。
     それが、本当にサッカーを愛する友達への応援になるはずだから。

     三春の桜は。やはり、今年も観に行くのは止めようと思う。その暇があれば、自分の役目を果たす準備をしたほうがいい。三春の桜が1000年咲き続けるように。少年サッカーが、可能な限り、できる範囲で咲くことができるように。努力を続けることが、今、僕にできること。その準備を続けること。それが、やらなければいけないことだ。まずは。福島のチームをA市に呼びたいと思う。そのために、今、やらなければいけないことがある。続いて、宮城・岩手と続けられればいいのだけれど。相手の状況もあることだから。何より、無理をさせるわけにはいかないから。

     だから。滝桜よ。待っていてほしい。

     いつか。いつか。観に行くから。きっと。きっと。観に行くから。それまで、毎年咲き続けてほしい。滝桜よ。僕は、今年、咲くべき子ども達を咲かせてから。君に会いに行く。だから三春の地から観ていてほしい、君の地元、東北の少年サッカーという満開の桜が咲く姿を。

     三春の地で。いつか美しく咲く君に報告したい。
     日本のサッカーは。東北のサッカーは。
     負けなかったよ、と。