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    息子、交通事故に遭う。退院。最終日35日目。 

     寒かった。


    「ありがとうございました。本当にお世話になりました」。

     ナースステーションに家族全員で頭を下げて、病院を後にした。息子と娘2人と僕で荷物を両手いっぱいに持って、駐車場に歩いた。重い? 気にならなかった。皆、笑顔だった。車に乗り、エンジンスタート。軽快に走り出す。行き先? 家ではない。15分ほどで目的地に到着。

     我が県・一宮の神社。

     14時からの回で〝お祓い〟を受ける。もちろん、家族全員で。神官の祝詞に混じってN5スタジアムのアナウンスが聞こえてくる。そうか。今日は「Sシティ カップ」をやっているんだ…。アナウンスはオレンジJクラブの得点を伝えていた。うん、頑張れ、新生オレンジJクラブ。今年は、ちょっと期待をしている。同じように、我が家も頑張るから。

     実は今年は、1月2日、ここに初詣に来た。息子は絵馬を買い、高校の合格を願った。その後、買ったおみくじ。運勢は…。「吉凶。内容を読むと〝いいことと悪いことが両方起きる。用心し、慢心しないこと〟。そうならないようにおみくじを結んだが…。結果、いいことと悪いことは起きてしまってた。でも。このまま放っておけない。お祓いまで受けたのだから。さぁ、リベンジ〝おみくじ〟だ。強い引きで運勢を引き直せっ!。結果は?

     吉っ!

     どうやら。ようやく、いい年が息子にもやってきそうだ。
     1年の再スタートを切った最終日35日目が終わった。

     今年がみんなにとっても、いい年になりますように。



     ※たくさんの励ましコメントをありがとうございました。こんなに早く退院できたのも、みなさまのお見舞い、応援があったからと確信しております。深く深く感謝申し上げます。また、1月10日から今日まで、完全な「親バカブログ」となってしまったことを深くお詫び申し上げます。次回更新より、通常版に戻したいと思います。



    息子、交通事故に遭う。師。34日目。 

     明日は天気が悪いらしい。


     明日は退院だ。考えてみれば〝あっ!〟という間の1カ月だった。

     何よりも。温かい言葉を書けてくださった皆さんに感謝です。
     本当にありがとうございました。

     「15日目」でも書いたが。今回の事故で、息子はたくさんのことを学んだと思う。これから、彼には常に感謝の気持ちを持って生きていって欲しい。また、今回、彼は周囲の〝優しさ〟をすごく感じたはずだ。もし、今後、彼の周りに「困難に遭遇している人」が現れたら、皆さんと同じように〝優しさ〟を持って、その人に接して〝力〟を与える人間になってほしいと願う。

     人は1人では生きられないのだから。
     
     僕的には。今回、人にとっての「師」という存在の大きさ、大切さを改めて感じた。息子は「師」には恵まれたと思う。まずは学校の担任の先生。クラス全体が受験生という立場にいながら、息子のことも気に掛けていただき、沈みがちな彼の心を支えていただいた。そして、塾のT先生。受験のスペシャリストとしてだけでなく、兄貴分のような立ち振る舞いで彼の気持ちを高めてくれた。そして、KSC・U15T監督。時には叱咤、時には激励し、「マルガリーゼ全員、自分の子よりもかわいい」という姿勢でウチの子にも接していただいた。監督がお見舞いに来た後の息子は「弱音を吐くわけにはいかねぇ!」といつも燃えていた。

     ちなみに。面接の練習で「尊敬する人は?」と聞いたら、
     「クラブの監督です」と答えが返ってきた。
     残念ながら「父」という言葉は出そうもなかった(笑)。

     実は僕にも、今回、「あぁ、この人は、やっぱり僕にとっての『師』だ…」と思った方がいる。僕は、このブログにエラそうに「どちらも〝被害者〟だ」と書いているが、これは、その『師』の受け売りだ。その方の「相手もたいへんだ…」という言葉が、そのことに気づかせてくれた。

     自分で気が付けなかったことが。とても恥ずかしい。

     その時から、僕は、この方の日頃からのスタンスを思い出すようにした。「悪い結果は、全て自分の力のなさが原因。他人のせいに決してするな。良い結果は、自分の力で成し遂げられたのではない。周りの協力、思いやりのおかげだ。だから、感謝の気持ちを決して忘れるな」。このスタンスが、直情的な僕をどれだけ救ってくれたことか。本当にありがとうございました。これからも、お手本にさせていただきます。サッカーも、人としての生き方も。その方に息子の退院を報告した時のいただいた言葉が、また僕を感動させてくれた。

     「これで、彼に、また会えるなぁ。それが一番うれしい」。

     一期一会。僕も同じ気持ちで大石の子ども達に接して行きたいと思う。
     師との出会いに感謝した退院前日の34日目だった。



    息子、交通事故に遭う。知能。33日目。 

     でも。試合は出来たっ!


     「ブッセ」という食べモノをご存じか? 外はサックリ、中はフワフワでクリーム等が挟んである洋菓子だ。簡単な例を挙げると亀屋萬年堂の〝お菓子のホームラン王〟「ナボナ」は「ブッセ」である。

     今日、義母が福島から来たので、一緒に息子のところに、午前中に行った。「柔らかいモノなら、孫も口にできる」と考えたのだろう、「あだたらブッセ」というお菓子を義母は持ってきてくれた。父親に似て、甘いモノ好きの〝孫〟は、「ありがとうっ!」と言って、早速、パクついたが…。

     「噛み切れないっ!」(笑)。

     歯が失いことが「どんなにタイヘンなことか…」を書きたいのではない。僕が書きたいのは、「歯というものは、普段、全く意識をしていないが、ちゃんとそれぞれ〝役割〟がある」ということだ。前歯が上下揃って失ければ、「ブッセ」さえ噛み切れない。動物のカラダとは、なんと機能的にできているのかを「ブッセ」と格闘する息子を見て再認識した。

     それにしても。コイツは歯の失い時の食べ方を思いつかないのだろうか?(笑)

     午後は1年生と2年生の試合会場に向かった。我がチーム1年生は「超ダンゴ」サッカーを推奨している。ただし、幼稚園のモノとは明らかに違う。詳しく書くとマネされるので(マネされたっていいのだが、笑)書かないが、言ってみれば徹底した〝ドライビングモール〟サッカーを教え込む。だから、1年生のウチはよく負ける。全員でボールに行っているから、ドカ~ンと蹴られたり、左右に振られたが最後、簡単に点を取られるのだ。歯で言えば、

     全員が前歯のサッカーだ(笑)。

     2年生も、つい先日までは「全員が前歯サッカー」だった。が。12月くらいから、ちょっとしたサジェスチョンを与えてきている。あくまでも、さりげなくのサジェスチョンではあるけれども。が、子どもたちはそれだけで、「奥歯もあるサッカー」が出来てきているように、今日は見えた。4月からは3年生だ。そろそろ犬歯の必要性も、〝舌〟の役割も考えさせてもいいのかなぁ…。でも、

     焦る必要はない。

     しっかり。段階を踏んで。この子達なりの、健全な〝好き嫌いなくモノが噛める〟サッカーを作っていけばいい。まだまだ、しょせん、試合内容は〝離乳食〟くらいのものしかないのだから。今、何より一番大切なことは、「食べること(サッカー)って楽しいっ!」と思わせることなのだ。だんだん、カタいものの食べ方を教えてあげれば、それでいいと思う。

     さて、その後の息子だ。家で嫁が僕に報告してくれた。 「そうかっ! 手で千切って食べればいいんだっ! と2個目でやっと気が付いたみたい。どうやらチンパンジー並みの知能はあるようよ(笑)」。

     いいFW(前歯の入れ歯)が出来るといいなぁと夫婦で笑った33日目だった。



    息子、交通事故に遭う。常食。32日目。 

    のち 寒っ! 真冬に逆戻り…。


     退院が正式に決まった。

     「13日の土曜日。昼食を摂って、退院しましょう。この昼食から常食に戻しますから、家に帰っても普通の食事をして大丈夫です」。医者が明るい顔で言った。

     「先生っ! サッカーはいつからやっていいですか?」。リュウが聞く。

     「すぐにやって大丈夫。骨の付きも早いし、プレートで止めてあるわけだしね。相手のヘディングが顎に炸裂でもしないかぎり大丈夫。サッカー自体は、どんなに激しくやっても全く問題なしだよ」。
     
     「やったっ!」。

     「ただ。義歯が、まだ出来上がってきません。2週間はかかるかな? 歯のない顔をみんなに見られるのもイヤでしょう。だから、それまで家でゆっくりしていてもいいと思うよ。きっと、学校も許してくれますよ」。

     ところが。息子は学校にKSCにも、すぐに行くという。「恥ずかしい? そんなことより、学校に行きたいっ! KSCのみんなとサッカーがしたいっ! 行き帰りは、マスクしていりゃわからないよ。歯がないことで、僕が変わるわけじゃない」。

     オマエ、将来、ハゲても心配ないタイプだなぁ(笑)。

     でも。まだ気を緩めない、退院するまでは…と自戒した32日目だった。



    息子、交通事故に遭う。義歯。31日目。 

     暖かい。明日から、天気は崩れるらしい。


     歯を何にするか? が大きな問題だった。

     上下とも並びで4本ならば、ギリギリ、「ブリッジ」もできると医者は言う。「これがいいのは、ずっと付けたままでいいということ。そして、簡単には取れないということ。サッカーの間も付けていて大丈夫。ただ、息子クンの場合、歯槽骨がないので、どうしても隙間ができてしまいます…。それと残った健康な歯を大きく削らなくてはいけません」。

     義歯という選択肢もある。簡単にいうと入れ歯だ。「入れ歯は入れ歯です。何かの拍子で外れることもあります。また寝る時は外さねばなりません。また、口の中に異物を入れるわけですから、違和感は大きい。何より彼は、まだ若い。女性の前で歯を外さねばならないシーンだって、これから出てきます…」。

     「インプラントが本当は一番いい。ただ、骨の移植が必要になる。下は前後とも失いですから、厄介です。成長段階で、骨を取るのはリスクもあります。やるならば、数年後がいい。骨の定着に3カ月、インプラントの定着に3カ月と時間も掛かりますから、〝今すぐサッカー〟の息子クンには向いていないし…」。

     医者的には? との問いを最後にぶつけてみた。
     返事は「ブリッジですね。若さとサッカーが理由です」。

     ふむ。で、当然、「オマエのことだ。オマエが選べっ!」ということになった(笑)。

     彼は義歯を選んだ。「歯を失くした今、残ったモノまで削るのはイヤだ。見てくれが同じならば、義歯で我慢をする。慣れの問題でしょ? サッカーをやる時は外せばいいじゃんっ! 歯のあるなしで勝負が決まるわけじゃないし。相手チームのヤツが揶揄してきたら、キッチリとプレーで返してやるっ!」とのこと。

     医者のこの言葉も後押しをした。「成長期ですから。ブリッジでカッチリ固定をすれば、窮屈さは出てきます。義歯ならば、成長に併せて何度も作り直せます。また義歯→ブリッジには行けますが、ブリッジ→義歯は難しい。義歯にしてみてから、〝やっぱりブリッジに!〟でもいいと思いますよ」。

     というわけで。本日、歯の型取りが行われた。

     退院が見えてきた、丁度1カ月目の31日目が終わった。


     

     ※1カ月。今日で、このシリーズを止めよう!とも思いましたが…。退院もなんとなく見えてきた風なので。退院まで続けます。すいません。